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御祓地区周辺の民話・伝説『賓頭婁(びんずる)嫁さ』

(『石川県鹿島郡誌』の「賓頭婁(びんずる)嫁さ」の話を現代語訳してそこから掲載。
 (参考)「穂にいですつっぱらめー七尾・鹿島の昔話」(坪井純子著)に同じ話と思われる話もあり )

昔々、七尾に源次郎狐という、人を化かすことにかけては大変名うての狐がおりました。酔った百姓を騙して「風呂です」と誘って肥溜めに
浸からせたり、馬のクソを饅頭と偽って、相手に一生懸命重箱に詰めさせたりと、まあその化かした数は、数知れぬというイタズラ狐でした。

  ある年のことです。一本杉(七尾市一本杉町)の晒屋(さらしや)の息子が嫁さんをもらいました。
 ところが、その翌朝、息子が目覚めて、嫁を起こそうと、声をかけましたが、いくら呼んでも返事がありません。不思議に思ってよくよく見れば、それは木像の※賓頭婁さんでした。つまり、木像の賓頭婁と寝ていたという訳です。
 この噂がたちまち町中に広がりました。
 「あの息子ぁ、どっか抜けとると思とったが、まさか唖(おし)と一緒になろうとしたとはの」
 「それがな、違うんじゃ。その嫁さちゃんと、もの言うたとい。美しい娘の声でな。」
 「じゃあ誰ぁ、あそこへ賓頭婁持ってたんかな。」
 「そりゃ何とも言えんわな。なんせ、あの賓頭婁ぁ、妙観院にあったもんやし、まさか寺のもんがそんなバチあたりな悪ふざけしんやろうしな。」
 「そんなら賓頭婁様自ら歩きなさって来たというのかなお。」
 「そうでも思わにゃ、道理に合わんやろ。」
 「いやそうでなかろう。おらが思うにぁ、源次郎狐の仕業に違いないわ。」
 「おっそうか。そうやそうや、源次郎狐がおったわい。」
 「そうやそうや、それに違いないぞ。」
とにかくそれがあってから、妙観院の賓頭婁は。「嫁入りの像」と呼ばれるようになったということです。
 
 さて、それから数年過ぎたある秋の日のことです。
 同じ七尾の八幡(七尾市八幡町)に馬次郎という大庄屋がいました。その息子が矢田(七尾市矢田郷地区)の次郎左衛門から嫁さんをもることになりました。どちらもはぶりのいい家だけに、その噂はすぐさま村中の誰もが知るとことなりました。大して楽しみもなかった昔のことです。村の者は、さぞかし盛大な婚礼やろうなと、その日が今か今かと楽しみにして待っておりました。
 ある晩、矢田の方から、提灯を沢山提げたものものしい行列が、いよいよやってきました。
 沿道で迎える村人は
 「なんちゅう、みよい嫁さまやろか。」
 「なんちゅう、見事な仕度やろ。」
と口々に賞めそやしながらも、行列に小石を投げたり、行列の人たちの顔に、`顔を洗うてやる’と言って、油に鍋墨を混ぜたものを塗りつけたりしましたこの手荒な歓迎が、当時のこの村の仕来たりだったのです。
 仕来たりだけに断れず、鍋墨に塗られた黒い顔で、花嫁行列は八幡の馬次郎さんの屋敷までやってきました。

 ところが、次郎左衛門が日を間違えて、一日早くやてきてしまったので、馬次郎の方ではてんやわんやの大騒ぎとなり、ともかく花嫁をはじめ、供の者を別室に案内して、休んでもらうことにしました。
 ところが、控えの間に燈を点けてみると、皆一様に、衣・衣裳こそ人間のなりをしていますが、その顔ときたら、鍋墨で皆黒々として、目だけキョロキョロ光るというありさまです。
 馬次郎方では、皆驚き怪しんで、隣りの間に集まりました。誰かが数年前の、源次郎狐の話を思い出しました。思い出した皆は、確かにその可能性が強いと思うようになりました。そして、また化かされたら大恥を掻くぞ、思案しました。狐なら、青松葉をふすべて、その煙を控えの間へ扇ぎ入れれば、煙に堪らず尻尾か何か出して、正体を現すだろうということになり、馬次郎の命令一下、実行に移しました。
 この燻りだし作戦には、花嫁も供の者も堪らず、ゴホンゴホンとむせいでいると、馬次郎は苦笑いして、
 「もうじき本性を現すはずじゃ。袴腰のへんに気ぃつけや。紐と思うても尻尾やぞ。扇げ、扇げ、もっと扇げ」
とまくし立てます。
 控えの間の者どもは、いよいよ苛立って
 「けしからんやつじゃ、煙を外に出せ。」
と言い言い、顔の汗やむせび涙を拭いはじめました。
 馬次郎方では、さていかにと、覗いてみましたが、誰も異常のない顔つきをしております。馬次郎方では、今一度相談しました。
 「まだ、安心できんぞぃ。そうや狐は湯に入ることが嫌いやっちゅうこっちゃから、試してみんか。」
そこで、代表の者が控えの間に入り、
 「遠い所をさぞお疲れでっしゃろ。ひと風呂浴びて、寛いでくさんせ。」
と誘いました。
 「それはそれはおおきに。こんな具合に体中汚れていることやし、そんなら、もらわしていただこうかいね。」
控えの者どもは、そう言って順繰りに、一人残らず風呂に入って浴びて上がってきました。しかし、誰もしっぽは無かったし、鍋墨を落したらどれもよう知っている顔だったので、これは本物やったと、やっと胸をさすって一安心しました。それほど源次郎狐は、名うての狐でした。
 式後の酒宴に、馬次郎方で事の次第を打ち明けたところ、皆々面白がって一座の興を増したということです。 

※賓頭婁(賓頭盧)=びんずる尊者は、釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))の弟子で、十六羅漢(らかん)の筆頭です。他には単に「びんずる」、また敬語を付けて「おびんずる」とか「おびんずる様」とか、「なでぼとけ(撫で仏)様」とも呼ばれています。 サンスクリット語(梵語(ぼんご))「ピンドーラ」の音訳から「賓頭盧跋羅堕闍(ばらだじゃ)」・「賓頭盧突羅闍(とらじゃ)」・「賓頭盧頗羅堕(はらだ)」とも呼ばれることがあります。「賓頭盧」が名前で「頗羅堕」が姓です。この羅漢さんは、お釈迦様の工程で、神通力に優れた尊者の一人です。しかし頭が良すぎて先走りしすぎたり、術を施したりして、お釈迦様によく叱られたようです。また酒もよく嗜み、困ったことも多くあったようです。そのため、後世の賓頭婁尊者は、お堂の外に祀られるようになったようです。
 ただし、この話に出てくる妙観院には現在木像の賓頭婁はありません。そのせいか「穂にいですつっぱらめー七尾・鹿島の昔話」(坪井純子著)では、賓頭婁ではなく、弁財天の像となっています。
現在確かに妙観院には弁財天があります。でもこれは、現実にあわせて話を作り替えただけの可能性もあり、ここでは「石川県鹿島郡誌」に出てくる賓頭婁のままにしておきました。

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